対象書籍
本を手に取ったきっかけ
哲学対話
4ヶ月くらい前から月一程のペースで「哲学対話*1」を行っている。
直近の会のテーマは「安眠とは何か」というものだった。
気が向いたので、眠りについて数冊の本をかじってみた。
本記事の題材はその中の一冊である。
はじめに
まだ第2章の途中までしか読んでないのだが、気が向いたときでないと書けないので
読み終わったところに限定して書いてみようと思う。
本のタイトルからも察せられるのだが、本書は基本的には睡眠薬には反対の立場をとっている。
私自身も入眠効果を持つ薬を服用することもあるので、自分事として関心を持って読むことができた。
著者である宇多川は睡眠薬は「脳の中枢神経に働きかける向精神薬」(P. 38)であり、安易な服用に警鐘を鳴らす。
日本の睡眠薬の消費量
日本は諸外国と違い精神科や心療内科などの専門医でなくとも睡眠薬を処方できる問題含みな国であることが指摘されていた。
以下に宇多川が引用していたベンゾジアゼピン(以下BZ)系睡眠薬の消費量(国際麻薬統制委員会・INCB「アニュアルレポート2010」)を掲載する。
本書が発行されたのが2022年なので、データが古いのが気になったが、たしかに日本は群を抜いて利用量が多い。
その理由は高齢社会であることや、先に挙げたように専門外の医師であっても処方できることが原因であると宇多川はいう(P. 16)。
引用元である該当レポートにおいても上記の結果に対して以下のような考察が書かれていた。
The high consumption levels observed in Japan might also reflect inappropriate prescribing patterns and associated abuse.
(日本で見られた高い消費量は、不適切な処方パターンとそれに関連する乱用を反映しているといえるだろう。)(Supplement-AR10_availability_English.pdf p.40 筆者訳)
国際的なそれっぽい機関に日本の処方の実態が「不適切」とかハッキリ書かれていると、やっぱり日本の現状っておかしいのかなと改めて思わされた。
ただ、上のデータはアジアに限ったもので、ヨーロッパの方が消費量が多いので日本が世界一というわけではない。本だけ読んでるとイメージをベースとして受け取ってしまいがちだが、原点に当たると解釈をより事実に近づけることができるなと思った。(ただ、引用がいちいちめんどい。)
不眠とは
「なんか寝れないなぁ」ということは誰しも経験があるように思うが、ではどこからが病的となるのだろうか。
宇多川が「不眠症」について解説している部分を紹介する。
それによると不眠症は以下の4つに分類されているという(P. 20-21)。
正直、どれも心当たりがあるんだが。。。
だが、上記の4つの症状が出ただけですぐに不眠症であるというわけではないとのことで、
以下の条件の両方を満たす必要があるとのこと。
- 上記のような症状が「1ヶ月以上」続いている
- 頻度:週2回以上
- 日中に身体的不調が出ている
- 倦怠感
- 頭痛など
このような不眠症に関する定義は知らなかった。
不眠というと単に「疲れてるだけ」、「ちょっと嫌なことがあっただけ」などと軽く捉えて、風邪などの病気に比べて軽く流していたからかもしれない。
これを知れただけでも読んで良かったと思う。
睡眠薬の副作用
睡眠薬は、呼吸を浅くする。結果として、自然な眠りほどの熟睡感を得られない(P. 22-23)。
他にも飲んだ後の記憶が抜ける、転倒のリスクがあるなどが挙げられていた。
おわりに
今まで処方されたら、「〇〇の効果がある薬」と医者に言われたままの粒度の理解しかしていなかった。これからは自分でも情報を取りに行って主体的に治療方針に関わっていきたいと思った。
おわり。
注
引用ページのみ記載した場合は『図解ですぐわかる睡眠薬その一錠が病気をつくる』を指す。
参考サイト
International Narcotics Control Board. 2010. Report of the International Narcotics Control Board on the Availability of Internationally Controlled Drugs: Ensuring Adequate Access for Medical and Scientific Purposes (accessed 2024-02-11).
---
よかったらボタン押してくださると嬉しいです。
*1:哲学対話とは1992年フランスのカフェにて発祥した一種の座談会のようなものである。
一つのテーマを決めて、それについて2時間ほど語り合う。